大学院生募集 (2012年4月14日 Update)
(1) 研究概要:大規模データを解析し情報を抽出するための統計科学,情報科学の理論・方法論の研究を行っています. 特に,ベイジアンネットワークなどの統計的グラフィカルモデルを用い,生命科学における大規模データを解析し細胞内における遺伝子のネットワークを明らかにするための先端的方法論の開発を行っています. この遺伝子ネットワーク構築の技術を用い,薬剤のターゲットを同定する方法,薬剤の副作用を予測する方法,より有効な新規ターゲットを発見するための方法の確立を目指しています. 推定される遺伝子ネットワークは,時には数千の遺伝子を含みますので,計算には膨大なリソースを必要とします. また,構築したネットワークを可視化し,解析するためソフトウェアも,この遺伝子ネットワークに対して最適化する必要があります. このような研究は,統計科学的モデリングの技術と情報科学的アルゴリズムの技術をスーパーコンピュータの上で融合させて初めて可能となる研究です.
(2) 研究成果の一部:薬剤応答のマイクロアレイデータから遺伝子ネットワークを推定し,新規薬剤ターゲット候補を同定した例を下に挙げています:
左図:人血管内皮細胞を炎症性サイトカイン TNFa により刺激したマイクロアレイデータに基づき推定した遺伝子ネットワークである.炎症反応に関連する遺伝子の関連図が得られていると考えられる.左に並んでいる遺伝子は,多くの遺伝子を制御していたハブ遺伝子である.このハブ遺伝子から2個の機能未知遺伝子を選んだところ,実験により炎症反応に大きな影響のある遺伝子であることが確認された.(Hurley et al., NAR, 2011)
中図:ヒト血管内皮細胞に高脂血症薬 Fenofibrate を投与して計測したマイクロアレイデータに基づき推定した遺伝子ネットワークの一部.左上の遺伝子は PPARa という遺伝子であり,Fenofibrate のターゲット遺伝子である.このネットワークは,PPARa の下流に位置する部分を表わしている.PPARa が薬効を示す作用機序を解明するために用いることができると考えられる.(Imoto et al., PSB, 2006)
右図:中図と同じ Fenofibrate 投与のマイクロアレイデータを用い,Fenofibrate 投与から4〜6時間で活性化される遺伝子ネットワークを青で表わし,その活性化された遺伝子ネットワークを制御している可能性のあるシグナル伝達経路を赤で表わした例.薬剤投与から時々刻々と動的に伝達される薬剤の効果を解析した例である.(Tamada et al., PSB 2009)
(3) もっと専門的な研究内容が知りたい方へ:ホームページ内に論文のリスト(一部は pdf ファイルもダウンロード可能)があります.
(4) 求む学生像:と書くと大げさですが,基本的には上記のような研究に興味を持てる方でしたら welcome です.私は数学科で統計学を学んで博士号を取得したというルーツを持っていますが,学生の学問背景はもちろん統計学には限りません.むしろ,統計学に加え情報科学的アルゴリズム,High Performance Computing を融合した研究を行うことが必要です.修士課程修了時には,取得されたデータとその背景にある目的意識から新たな手法を構築できることを目標としています.博士課程の学生には,生物学的モチベーションを持ち自ら問題を定式化し解決することのできる研究者になれるよう指導します.学生の方には,すでに構築されているツールを使うだけの研究者にはなって欲しくないという思いがあります.
(5) 当研究室 (DNA情報解析分野) で研究を行うための道筋を下に示しています:
メールでの連絡は,imoto[at]ims.u-tokyo.ac.jp まで.([at] → @)
東京大学理学部情報科学科の学生の方々へ
他大学学部で情報科学を専攻する学生の方々へ
学部で情報科学以外を専攻する学生の方々へ
東大院情報理工コンピュータ科学専攻修士課程以外の大学院修士課程から本研究室にて博士号取得を希望する学生へ