1. 研究組織

    研究分担者氏名 吉田健一
    所属機関・部局・職 日立製作所・基礎研究所・主任研究員
    現在の専門 人工知能
    最終学校名・卒業年 東京工業大学80年(学部)、大阪大学 博士(工学)
    生年 昭和32年

  2. 研究課題

    逐次ペア拡張に基づく帰納推論
    Inductive Inference by Stepwise Pair Expansion

  3. 研究目的

    与えられた個々の事実から一般的な規則を導き出そうとする帰納推論 は,一般的な規則から個々の事実を説明する演繹推論に対立する概念として人工知能研究における一大テーマであり,データ分類規則の学習,マクロ・ルール獲得による推論の高速化,抽象的概念の獲得,データやトレースからのプログラム生成など,種々の研究分野を含んでいる.

    研究者は,これら多岐に渡る推論機能を統一的に実現するアイデアと して「データに含まれる類型的ペアの逐次拡張」を提案してきた.さらに「類型性」の指標として統計的評価尺度を用いる方法を提案した.以上のアイデアを,さらにデータが本来持っている構造情報を利用したデータ解析手法に発展させる.

  4. 研究計画・方法

    構造を持ったデータの代表例としてはネットワークトラフィックに関 する情報があげられる.例えば,WWサーバーサイトに対して,遠隔地のクライアントサイトから,ルーター等の中継装置を通して,アクセスが来ている様子は,グラフ形式のデータとして表現できる.グラフ表現したネットワーク上のWWWトラフィックパターンを解析することで分散型キャッシュの構成を調整し,ネットワークのデータ流量を削減する帰納推論技術は実現可能と考えられる.現在までに行なった予備的シミュレーションによる機能確認では,帰納推論技術を利用してトラフィック制御を行なう事で,全く制御をしない場合に比べネットワークへの負荷を約26%削減できる事を確認した.

    同様なケースはインターネットのトラフィック制御全体に散見される と考えられ,ネットワーク制御への応用を主なターゲットに想定し,必要なデータ解析技術の研究を推進する.

  5. 参考文献

    • K. Yoshida and H. Motoda CLIP: Concept Learning from Inference Patterns J. of Artificial Intelligence Vol. 75, No. 1 pp, 63-92 (1995)
    • .吉田、元田、Nitin 類型パターンの抽出に基づく帰納的学習と演繹的学習の統合人工知能学会誌 Vol. 10, No. 1 pp. 61-71 (1995)
    • K. Yoshida and H. Motoda Automated User Modeling for Intelligent Interface International Journal of Human Computer Interaction Vol. 8, No. 3 pp. 237-258 (1996)
    • 吉田、元田 逐次ペア拡張に基づく帰納推論 人工知能学会誌 Vol. 12, No. 1 pp. 58-67, (1997)